療養費請求に危機!?

行政から見た治療院と個人情報

では、実際に行政では個人情報の保護についてどのように考えているのでしょうか。
某区役所の老人医療保険担当者に取材を申し込み、お話を伺いました。

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 ―― 個人情報の保護に関して、行政ではどのような動きがあるのでしょう。

 担当者 「たとえば、重複・頻回の訪問指導を行う事業があるんですよ。ここでは、月単位のレセプトにおいて同じ科目、同じ病気で何度も違う病院に通っていないかというのをチェックしています。こういった事業を委託するときには、仕様書に個人情報保護の関係でそれなりの認証が必要と書いてあります。つまり、こういった事業はプライバシーマークのような第三者による認定を受けた機関でないとできないということです。

また、国の事業においては、競争入札を受ける条件として個人情報の保護に関して、ハードルを設けようという動きがあります。レセプトの点検委託も、その一つですね。

実は昨年度、何の認証もとってない事業所にこのようなことを任せてしまったら、ものすごく質が悪くなってしまったということで、契約解除に到ったという事例がありました。お互い話して向こうに身を引いてもらったのです。

要するに、個人情報を扱うことで、それなりの質が問われるようになってきているということです。質が低いところはセキュリティも低いと思われても仕方がないわけです。治療院も同じです。
そういった事情から、個人情報の保護に関するPマーク(プライバシーマーク)や、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)といった認証を取ろうとしている企業がどんどん出ています。ただ、結構順番待ちが大変になっています。費用も負担になります。
どの業態、業界でも同じなのかな。このような認証を取っているから質が高いんですよ、だからいい仕事しますよ、ということですね。」

 ―― 否応なくそういった波が押し寄せてきている感じはありますね。

 担当者 「役所の書類も個人情報をうたっているものが多くなっています。ただ、個人情報の保護というものが具体的にどうすればよいのかよくわからないということで、情報が流出してしまっている事例が多くあるわけです。

もっとも、Pマークを取るというのはそれなりの中堅企業以上じゃないとお金も人も時間もかかる。
せいぜい5~10人くらいの機関では、そんなに負担がかけられないと思うんですよ。」

 ―― 日本手技療法協会では、経産省や厚労省から認定個人情報保護団体の認定を受けています。そこで、このハードルを少しでも下げようと治療院のために、Pマークにも通用するコンプライアンスプログラム、SPマーク(手技プライバシーマーク)を作ったという経緯があります。

 担当者 「こういったものはとても必要だと思います。このハードルが少しでも下げられるというのはいいですね。ただ、そこには質の低下があってはならないわけです。認証機関のスキルが問われますから。
このマークが、Pマークにも対応できるコンプライアンスプログラムを持っていることは、とても評価できると思います。」

 ―― 個人の治療院がこういったことに200万も400万も使うわけにはいかない。ただ、残念ながら「個人情報って何?」っていうところも多いんですよ。

 担当者 「よく役所でも、外部アクセスにフロッピーとか使用できなくしてしまうとか、サーバーと繋がっているパソコンには、当然のことながらアクセス制限をかけています。
あとは、評価を与えた後の定期的なチェックが必要ですね。信用は簡単に潰れますから。今の時代は介護にしても何にしても、質なんですよね。この質を高めるためにメンテナンスをかける。こういう事をこまめにやっていく。
これによってお客さんが増えていく。従業員の人達も増えていく。そうなっていくと、他店舗展開にもつながる。
この努力で報われるような環境、努力ができるようなハードルでないと無理です。
高すぎないハードルならば、認証を取るための経費が多少かかっても将来的にペイできるし、ステップアップもできる評価につながります。」

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