施術録は何故書くのだろう? 【第二回】「基礎からやり直す施術録」

施術録について、改めて考え直すこのシリーズ。第二回の今回は、施術録について基礎から考え直してみることにします。インフォームド・コンセントにも欠かすことのできない理由とは?

基礎からやり直す施術録

前回は「施術録は請求の根拠」というお話をさせていただきました。今回は施術録について、もう一度基礎からご紹介していきます。ご自身の知識をブラッシュアップするためにも、またお弟子さんに正しい知識を伝えるにも、今一度施術録について考慮されてみてはいかがでしょうか?

施術録の存在意義

一般的に治療院の現場では「施術録」と呼ばずに「カルテ」と呼称される事は多いかと思います。実際、「レセプト」も「療養費支給申請書」と呼ばなければいけないのですが、言いやすさから「カルテ」「レセプト」は、現場用語として認知されている事だと思われます。もちろん、正式には「施術録」ということも忘れてはいけません。

施術録の存在意義は、患者様の状態や経過、いつ、どんな施術をしたか、各種所見、などという施術の履歴であると言えるでしょう。まさに保険請求の根拠であり、施術の根拠を示すものです。施術の根拠である施術録を読み取る事で、施術スタッフ間で情報共有が行える事は、皆さんもご存じの通りです。

しかし今ではさらにもう一歩進んだ施術録の存在意義も現れ始めています。それは患者様との情報共有です。

インフォームド・コンセント

医療業界では近年になって、インフォームド・コンセント(説明と同意)が重要視されるようになりました。これは当然の如く、手技療法業界も他人事では無いわけです。特に受領委任を行っている柔道整復師としては、患者様に対しアカウンタビリティ(説明責任)が大きい事を自覚する必要があります。

インフォームド・コンセント、アカウンタビリティという事を重要視するならば、患者様から「○月○日に私が受けた施術は何故必要だったのですか?」という質問を受けた場合、真摯に答えられなければなりません。もちろんこれは当然のことですが、ここで正確に状況を伝えるためにも施術録という施術の履歴が必要となるのです。

患者様には自ら受けた施術がどういったものであったのかということを尋ねる権利があります。そして施術を行った者には、何故行ったのかということを説明する責任があるのです。そのためには施術録という履歴は、決して欠かすことのできない、必要不可欠な存在であることを今一度認識することが必要です。

施術録の話題でよく登場する「○部位以下の請求では負傷原因は必要無いから書いてないよ」という話は、このようにインフォームド・コンセントから考えて、言語道断のものと言えるでしょう。

個人情報保護に関しても考慮する

施術録は上記で説明したような重要な意義があり、情報が詰まっています。これらの情報には、患者様の個人情報が詰まっているわけです。しかも身体の状態という、プライバシーに関わる極めて重要な個人情報です。

個人情報は鍵付きのキャビネットなどに 保管することが望ましい

個人情報が叫ばれる現代としては、施術録の保管・保存に関しても疎かにするわけにはいきません。施術録は、施術の終了日から5年間の保管期間が定められています。5年の間、安全に施術録を保管するための対策も必要です。

施術録には患者様の重要な個人情報が取り扱われている、という事も忘れてはいけない事実なのです。

「ただ有れば良い」物では決してない

以上のように、施術録は「ただ記載してあれば良い」という物ではなく、スタッフ間での情報共有、患者様への説明責任としても、とても重要な物だと言えます。必要最低限の内容を記載しておしまいという事ではなく、自らの請求の根拠として、しっかりとした記載を行っていただきたいと強く願います。

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